葬儀代は誰が払うべき?兄弟で折半?

お葬式を済ませた後、葬儀費用を払う際に兄弟の間でこんな争いが…
弟「葬儀は、全部兄ちゃんが払うって言っただろ!」
兄「金なんかねえよ。車代に使ったんだよ!」
弟「そんなこと知らねえよ。父ちゃんが残してくれた金、どうしたんだよ」
兄「だから、車、買ったって言ってるだろうが」
弟「ふざけんなよ!遺産は全部兄ちゃんがもらって、葬儀代は折半しろって、虫がよすぎるんだよ!」
兄「ぬぁんだと・・・やるかーァ」

・・・・・・はい、ストップ! 兄弟げんかは、これでおしまいにしましょう!
でも、こんな兄弟ゲンカって、どこかできっと起きているのではないですか?
お葬式代は、兄弟の誰がはらうべきか?
昔なら、お香典を喪主が受け取る代わりに、葬儀代も喪主が出す、これが常識だったでしょう。
その背景には、喪主が長男で、財産のほとんどを相続していたわけで、代わりに親の扶養や、墓や法要等の祭祀関係を受け継いだという事情があります。
しかし、現在では、お葬式代をお香典で補い、足りない分を兄弟で割るというのが、公平で良いのではないでしょうか。
というのは、近年、相続は兄弟同等で、兄が家を継ぐという考えも薄くなっているし、葬儀代は、残された兄弟が割り算する。その時、長男がいくらか多く払ってやる、というのが、兄のメンツも保てていいのではないでしょうか。
一番、いけないのは、弟が「おれが全部はらってやるよ」です。
兄の立場がありません。ほんとに。
いずれにしても、兄弟は、仲良く助け合いましょう♪

判例から学ぶ「葬儀費用は誰がはらうべきか?」その他 Q&A

<Q>葬儀費用を誰が払うかについて、法律上の規定はありますか?
<A>葬儀費用を誰が払うかについて、法律上の規定はありません。
葬儀については、宗教や地方の慣習など、様々な事情があるため、法律では規定されず、慣習や家族の事情等に基づいて支払うべきだという法的解釈のようです。
なお、上記のように法律上の規定がないため、葬儀費用の負担については裁判所の見解も分かれており、実務的には結局のところ「ケース・バイ・ケース」になっているということです。
<Q>香典から香典返しを引いた残りを、葬儀費用にあてても良いですか?
<A>香典を葬儀費用にあてるのは、自由です。香典は、もともと葬儀費用にあてるべき性格のものです。
<Q>葬儀費用に関して、誰が払うべきだという判例はありますか?
<A>最近の判例では、通夜や告別式のような死者の追悼儀式に要する費用は、原則として儀式を主宰した者(喪主)が負担するものである、という判例があります。
なお、上記の判例でも、相続人の合意があれば別であるとされているため、相続人の話し合いの上での「合意」で決めるのは自由です。
<Q>亡くなった父の預金から葬儀費用を支払っても良いですか?
<A>亡くなった父の預金は遺産の一部ですから、葬儀費用といっても遺産から葬儀を支払うことは問題の原因にもなります。
支出する金額が社会通念上妥当なもので、相続人全員の合意を得れば、遺産から支払うことも止むをえないことです。
しかし、葬儀費用は喪主が負担するべきという判例に立てば、喪主から遺産に戻さなければならなくなる可能性があります。
いずれにしても、遺産から葬儀費用を支出する場合は、慎重な対応が必要です 。
なお、参考までに、平成24年3月29日名古屋高裁判決を下記に引用します。
この判例では、「葬儀費用は儀式の主宰者(喪主)が負担すべきものである」と判示してあります。
・・・ところで,葬儀費用とは,死者の追悼儀式に要する費用及び埋葬等の行為に要する費用(死体の検案に要する費用,死亡届に要する費用,死体の運搬に要する費用及び火葬に要する費用等)と解されるが,亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者,すなわち,自己の責任と計算において,同儀式を準備し,手配等して挙行した者が負担し,埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当である。
なぜならば,亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式を行うか否か,同儀式を行うにしても,同儀式の規模をどの程度にし,どれだけの費用をかけるかについては,もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し,実施するものであるから,同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であり,他方,遺骸又は遺骨の所有権は,民法897条に従って慣習上,死者の祭祀を主宰すべき者に帰属するものと解される(最高裁平成元年7月18日第三小法廷判決・家裁月報41巻10号128頁参照)ので,その管理,処分に要する費用も祭祀を主宰すべき者が負担すべきものと解するのが相当であるからである。
また、重要な例外として、同判決は次の点をあげています。
- 亡くなった者が、あらかじめ自らの葬儀に関する契約の締結などをしている場合(いわゆる生前予約)
- 相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がある場合
このような場合には、応分の負担を相続人一同に求めることができる、ということになります。
<まとめ>親の葬式代(葬儀費)は、誰が払うべきか?
一般的には、喪主が支払う(喪主は葬儀の主催者だから)
葬儀費用は、誰が負担しなければならないのか?
この問題については、特に、法律上の規定はありません。
そのため、通常は、家族の話し合いで決めたり、その地の慣習に従って決めることになります。
葬儀費用の負担に関する裁判において、葬儀費用はその葬儀を主宰した人(つまり喪主)が負担するという判例があります(平成24年3月29日名古屋高裁の判決)。
しかし、この判例には当然反論も出ます。というのは「喪主は葬儀を主宰した人」とはいっても、葬儀は喪主が自主的に希望したものでないはずですから…。
実際のところ、葬儀費用は、喪主が支払うのが一般的です。
問題は、喪主の経済的事情がひっ迫しているとき、兄が喪主になったからといって、葬儀費の全部を払うのは経済的にできないことがある、ということです。
また、立場的に兄が喪主になったものの、経済的には弟のほうに余裕があるとか、家族内において様々な事情があるでしょうから、やはりじっくりと話し合うことが円満解決の手段となります。
相続財産の中から支払うという考え方もあります
葬儀費を相続した財産から支払うという考え方もあります。
この考えは法律的にも支持されています。葬儀費用は相続財産の中から支払われるものだという判例もあります。(昭和51年11月25日大阪家裁の審判による)
葬儀費用の一部をお香典で負担する
また、葬儀費は出費だけではなく、お香典と云う収入もありますので、葬儀費用の一部をお香典で負担するという考えもあります。この場合、葬儀費用は、集まった香典で補い、不足分は相続財産の中で支払うこともできます。
それで足りない場合は、相続分に応じて負担する(相続債務)ことも可能です。
葬儀費はだれが払うか? 結論は、誰が払ってもよい!
葬儀費は、誰が払うべきかについて法律上の規定がないのですから、喪主が払っても良いですし、親族の合意があれば、他の方が払ったり協力して払うのでも問題はありません。
葬儀費のことで後々問題にならないように、葬儀費をなるべく安価に抑えた葬儀を行うという考え
高額の葬儀を出せない場合、葬儀費をなるべく安価に抑えた葬儀を行う、というのは賢明な選択肢になります。そのために、重要なことは、葬儀費を安価に抑えることができる葬儀社を探すことが大切です。