この記事では、樹木葬の種類や特徴、費用相場、メリット・デメリットのほか、他のお墓との違いについて詳しくご紹介します。
理想のお墓のイメージ、こだわり、地域などを選んで自分にぴったりのお墓をチェックしてみましょう。
樹木葬の魅力について

自然を愛する人、森や樹々が好きな人にとって樹木葬は理想のお墓ではないでしょうか。
樹木葬は、樹林墓地とも呼ばれ、遺骨の埋葬箇所に墓石を建てず、樹木や花を墓標とするお墓です。
従来の柱体の墓石が所狭しと立ち並ぶ冷たい印象の墓地とは異なり、さわやかで美しく、鳥たちの声が聞こえる環境の中で眠ることができる、そんな魅力を感じられる墓地が樹木葬だと思います。
値段も比較的安価で、埋葬後の管理やメンテナンスを個人で行う必要がないため、墓石の後継者がいない方にとっては、特にメリットのある墓地の形態となります。
樹木葬の特徴と人気について
樹木葬の特徴については、次のようなことが挙げられます
- 自然に還ることができる
- 遺族の負担を軽減できる
- 墓石代が不要のため費用がかからない
- 継承問題の心配がない
- 宗旨や宗派が不問の場合が多い
樹木葬はお墓選びの中で、最も人気の高いお墓です
「樹木葬」は、最近人気が高まる一方です。
募集開始ですぐに埋まり、応募倍率が10倍になるほど人気の高いところもあります。
「鎌倉新書」による2021年の「第12回お墓の消費者全国実態調査」でも、購入したお墓の種類は「樹木葬」で、前回の第11回より選ぶ人がさらに増えているのが実情です。

出典:【第12回】お墓の消費者全国実態調査(2021年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向
樹木葬の種類には大きく分けて3つあります
樹木葬には大きく分けて「庭園タイプ」「公園タイプ」「里山タイプ」があります。
都市部では「庭園タイプ」の数が増えてきており、人気も高くなっています。
庭園タイプの樹木葬

庭園タイプの樹木葬とは公園のように整備された空間の中にシンボルツリーや花木を植えたタイプで、多くは庭園やガーデニング風といった雰囲気を保つように管理されています。
寺院の境内墓地や霊園の一角を利用することもあり、“都市型”の樹木葬と言えます。
公園タイプの樹木葬

比較的広くとられた墓域に樹木や芝生を植えたりするなど、まるで公園のような印象の環境が整備されたタイプの樹木葬です。
霊園内の一区画を樹木葬としたり、墓域に1本から数本の樹木を植えるシンボルツリー型の樹木葬も多く見られます。
里山タイプの樹木葬

自然とより密接した樹木の多い環境の中、人を弔うための墓地で里山の草木を育てるという自然保全の役割を持ったタイプの樹木葬です。
里山タイプの樹木葬では、山林などの広大な面積を持ち、一区画に1本ずつ樹木を植えるところが多いようです。
樹木葬の埋葬方法 3つあります
遺骨を自然に還す散骨方法
遺骨を埋めることをせず、遺骨を微細にして撒くという方法で、散骨のようにして自然に還す埋葬方法です。
この方法は、散骨した後に遺骨を取り出すことができなくなるので、注意が必要です。
布などに包んで埋葬する方法
遺骨がほかの人の遺骨と混ざらないように、布や袋などに包んだ状態で納骨する埋葬方法です。
この埋葬法には、複数の人の遺骨を一つのスペースに埋葬する共同埋葬型、遺骨を個々の区画に分離して埋葬する個別埋葬型があります。
この方法は、納骨を包んだ布袋などが土中で腐っていまうと、ほかの方の遺骨と一緒になって合祀されてしまうことがあり、遺骨を個別に取り出せなくなる点で注意が必要です。
専用の壺や筒などに入れて埋葬する
寺院や霊園専用の壺や筒などに遺骨を入れて納骨する埋葬方法です。
一つのスペースに分けて埋葬する共同埋葬型、遺骨を個々の区画に埋葬する個別埋葬型があります。
霊園や寺院専用の壺や筒で納骨するため、他の人の遺骨と混じることはありません。
ただし、多くの霊園では一定期間の後に他の遺骨と合祀して土に還すという方法をとるところもあります。この場合、合祀後は個別に取り出して改葬することはできなくなります。
※上記のいずれの埋葬方法であっても、最終的には土中に埋められることが多く、埋葬した遺骨を取り出して改装する予定のある場合、樹木葬は避けるべきです。
樹木葬のシンボルツリー/使われる樹木
樹木葬は種類や埋葬方法によって、植樹される樹木も異なります。
墓標として使われる樹木は、多くの人に馴染みがあるものが多く、花が咲くものが選ばれる傾向にあります。
以下、墓標に使われることが多い樹木を紹介します。
※樹木葬に使われる木の種類は他にもありますので、ご了承ください。
ツツジ(映山紅)

樹木葬でよく使われているツツジの木です。あまり大きくならず赤や白い花が咲き、扱いやすく強健な性質など優れた性質を持つ花木です。
サクラ(桜)

桜は日本人がいちばん好む人気の樹木です。全国で樹木葬として最も使われているのが桜の木です。
桜は寿命が長く大きな木に育つため、多くの樹木葬では集合墓の形をとり、桜の木の周りにたくさんの遺骨を埋葬することが多いですね。
ハナミズキ(花水木)

ハナミズキも桜と同様に人気がある樹木です。ハナミズキは街路樹としても人気があります
ハナミズキは桜ほど大きくはならない低木で、春には白い花を咲かせ、秋には温暖地でも鮮やかな紅葉を楽しませてくれます。
サルスベリ(百日紅)

サルスベリは真夏の暑い盛りに色鮮やかな花を咲かせます。花色は白、桃、紅、紫などがあります。
花期が長く、夏から秋までの長い間咲き続けるので墓地を明るくしてくれます。
アジサイ(紫陽花)

アジサイも、桜と同様に日本人にはおなじみの花で人気も高い低木の樹木です。
最大の魅力は満開に咲き誇る花がとてもあでやかで、多くの樹木葬に植栽されています。
どんな人が樹木葬を選んでいるの?メリットは?
お墓の承継者の問題を解決したい人
樹木葬の場合、墓石をたてる必要がなく、管理や清掃は霊園で一括して行うため、従来の墓掃除などをしなくても綺麗な状態を保つことができます。
そのため、後継者問題や引き継ぎの問題がなく、霊園や墓地管理者のほうで代わりに永代供養してもらうことができ、管理の問題も解消できます。
改葬(お墓の引越し)や墓じまいを希望している人
先祖代々のお墓を墓じまいして改装する際、低価格で改装が可能な樹木葬を選ばれる方が多くなっています。
また、後継ぎがいない、親族が少ないなど、永続的な供養が困難であるとの理由で、承継の必要がない埋葬方法として樹木葬を選択するケースが増えています。
自然回帰で眠りたいと思っている人
自然を愛し、死後は自然に戻りたいという自然回帰を志向する方が、樹木葬を選択するケースも増えています。
お墓になるべく予算をかけたくない人
樹木葬は墓石をたてる必要がなく、従来のお墓を購入するよりもはるかに費用が安価ですむため、お墓になるべく費用をかけたくない方が求めるケースも増えています。
樹木葬の費用、相場はどれくらい?
樹木葬の費用相場は、立地場所や埋葬方法によって幅が出るものの、一般墓に比べると墓石が不要(墓標に石材を用いる場合も小型ですむ)で、費用を安くおさえることができます。
「鎌倉新書」で2020年に行なったお墓に関する実態調査の結果のなかで、樹木葬と一般墓の地域別平均購入価格の対比が出ていますので、下記に紹介します。
全国 | 西日本 | 東日本 | 東京都 | |
樹木葬の平均購入価格 | 68.7万円 | 62.2万円 | 70.6万円 | 79.8万円 |
一般墓の平均購入価格 | 176.1万円 | 166.8万円 | 178.8万円 | 210.3万円 |
出典:【お墓】地方・都道府県別 お墓の消費者全国実態調査(2020 年)
この詳細によると、樹木葬の平均購入価格は 71.7 万円で、24.1%が 60~79 万円で購入したという結果がでています。
これに対して、一般墓の平均購入価格は169.0 万円で、25%が 80~119 万円で購入したという結果がでており、樹木葬のほうが遥かに低価格であることが分かります。
樹木葬を実施する際の流れ
ここでは、実際に樹木葬を実施する際の流れについてご説明します。
なお、樹木葬の場合、本人は樹木葬を強く希望していても、家族は樹木葬に反対の場合もあります。
あとあとトラブルにならないよう、樹木葬を選ぶ際は家族としっかり話し合って了解を得てからにしましょう。
樹木葬を選んで契約するまでの流れ
申し込むまでの流れは一般墓とほぼ同じですが、墓石を必要としない分が簡略化されます。
1)樹木葬に関する霊園の情報を集める
インターネットやパンフレットを見て、気に入った樹木葬があったら、実際に霊園に資料請求をして、情報収集してみましょう。
積極的に調べて検討し、まずは納得した場所を選ぶことが大切です。
2)現地見学へ
パンフレットの画像は美しいところだけを紹介しているケースがありますので、実際に現場に出向いて見る必要があります。
その際、交通の便や周辺の利便性などを確認し、わからない点があれば質問をしましょう。
写真や資料だけでは分からない点は納得ていくまで解決することと、自分の目で確かめることが、後悔しないお墓選びのコツです。
3)契約・入金
現地を見学してから費用の支払い、将来のことまでじっくり検討し、納得できたら申込をしましょう。樹木葬はなにかと人気ですから、条件の良いところから埋まっていきます。
検討にあまり時間をかけすぎると、目当てにしていた樹木葬が先に取られてしまいます。
契約の段階で、費用の支払い方法を決めます。
4)使用許可証の交付
霊園側で契約の内容を確認したのち、使用許可証が発行されます。
この許可証が発行されると、樹木葬を実施できるようになります。
樹木葬に遺骨を埋葬するまでの流れ
樹木葬は、お墓の一種ですから、遺骨を埋葬するには、従来の墓石の場合と同様に法的な手続きが必要になります。
1)死亡届を役所に提出する
死亡届の受理を受理したら、火葬許可証の発行をしてもらます。
なお、多くの自治体では「死体埋火葬許可証」として発行されます。「死体埋火葬許可証」は、埋葬と火葬の両方を許可する書類です。
2)ご遺体の火葬
火葬場で火葬許可証を提出します。
火葬が終わり、遺骨を骨壺に納める骨あげが行われたら、火葬済みと押印された火葬許可証が返却されます。これがそのまま埋葬許可証となります。
3)樹木葬をおこなう場所で埋葬許可証を提出する
埋葬の当日、遺骨を持参します。埋葬許可証は納骨の際に墓地、霊園などの管理者に提出します。
なお、霊園によっては、遺骨をパウダー状にする必要があるため事前に確認をおこないましょう。
当日、霊園のスタッフまたは担当の石材店が、樹木葬に納骨します。
まとめ
最近では、樹木葬の人気が高まり、需要も増えています。
しかし、樹木葬を行う上で注意しなければならない点もありますし、トラブルを防ぐために事前に確認や検討が必要なこともあります。
なお、樹木葬は、墓地不足が問題となっている都市部を中心に増えていくと考えられています。
また、「お墓にそこまでお金をかけたくない」「お墓を継承する子供がいない」「自然に還って眠りたい」といった、新たなニーズも増えています。
樹木葬を選ぶかどいうかは人それぞれです。さまざまな選択肢を考慮したうえで、最も納得のいく弔い方を選びましょう。